家族の安全を守るためのアドバイス
セキュリティ対策ソフト『avast』を提供する、アバスト ソフトウェア ジャパン合同会社主催の「パパママが知っておきたいSNSとの付き合い方」に関する勉強会に参加してきました。
アバストは、チェコに本社を置くデジタルセキュリティベンダーです。1988年の設立以来、グローバルに事業展開を続け、世界68カ国で100万人以上のアクティブユーザーを抱える巨大企業となっています。
日本でのユーザー数は約580万人で、2017年には日本法人を設立。東京オフィスも存在します。
無料のPCセキュリティ対策ソフトとしては老舗なので、実際に利用されている方も多いのではないでしょうか。僕も初めて自分のWindowsマシンを買って入れたセキュリティソフトがavastだったりします。
セキュリティ対策ソフト『アバスト プレミア』をインストールしてみた
子育て世代の「シェアレンティング」の問題
アバストで “脅威インテリジェンスディレクター” を務めるMichal Salat氏から「シェアレンティング」の問題が語られました。
シェアレンティングとは、共有を意味する「シェア」と、子育てを意味する「ペアレンティング」を組み合わせた造語です。親が子供の写真をブログやSNSなどに投稿する行為のことを指します。
親としては「かわいい我が子の姿をみんなに自慢したい」「成長の様子を見せたい」という動機で投稿することがほとんどだと思います。ところがこのシェアレンティング、子供の立場から見てみると、それが望まぬ行為である時もあるのです。
知らないうちに自分の写真が公開されている
アメリカの女優グウィネス・パルトロウさんが、娘と一緒にスキー場で撮った写真もその事例のひとつです。この写真、本人の許可なくInstagramにアップしたということで、娘のアップルさんから批判を受けました。
多くの「いいね!」を集めたこの投稿も、当事者であるアップルさんからは「同意なしにSNSへ自分の写真を投稿しないでほしい」と、反感を買ったのです。
「ママ、私の写真ネットに上げるのやめて!」 米女優と娘それぞれの言い分 – BBCニュース
日本国内でも、タレントの渡辺満里奈さんの事例が挙げられました。娘の誕生日に、本人が産まれた当時の写真をアップして良いか聞いたところ「載せてほしくない」と言われました。
今日は娘の9歳の誕生日✨
「生まれたての時の写真をSNSに載せてもいい?」と聞いたら、
「載せてほしくない。自分が大人になって自分(の意思)で載せるならいいけど」(意訳)と娘っこ。
うん。娘はSNSを一度も見たことがないけど、その意思表示とても大切。— 渡辺満里奈 (@marina_w1970) June 24, 2019
渡辺満里奈さんは、娘の意思を尊重して写真のアップをやめました。その後も子供の写真を載せる場合は「子どもの許可を得てから」行うよう心がけたそうです。
親バカ全開で生まれたてホヤホヤのかわい子ちゃん(ガッツ系)を見ていただきたかったけどやめときます。載せる時は顔を隠すとしても子どもの許可を得てからで。
— 渡辺満里奈 (@marina_w1970) June 24, 2019
この2つの事例では、いずれも子どもが自分の意志で意見を言える年齢であったことが、問題提起の軸になっています。
シェアレンティングのリスク
一方で、子どもがしっかりと意思表示できない年齢の場合、大きくなってから本人が投稿を発見して問題になる場合もあります。一度インターネットにアップした投稿は「デジタルタトゥー」となり完全に削除することは困難です。
自身の知らないところで親が勝手に写真を公開。見られたくない姿が晒されている事実にショックを受けるなど、SNSの発展による弊害が出てきています。度を過ぎれば親子関係が悪化する事態に陥ることもあるでしょう。
本人の同意なしに投稿された内容を発端として、ネットいじめやハラスメント、サイバー犯罪、個人情報漏洩など、思いもよらぬ問題が発生することもあります。
SNSで出身地や本名、学校、誕生日、交友関係をシェアしている人も多いと思います。そもそもSNSは、人とのつながりを主軸としたサービスですから、なかなか線引きが難しいという問題もあります。
ところがそれを逆手に住所を特定されて拡散されたり、本人が嫌がるような写真をネタにいじめを受けたりするなど、犯罪行為に等しい案件が急増しています。
その背景には、SNSの公開範囲を「非公開」にしていないユーザーが多いことが、ひとつの要因として挙げられます。日本人の38%が「SNSで非公開にしているコンテンツはない」あるいは「非公開が何の意味か知らない」という衝撃の実態が明らかに。
非公開設定にしていないユーザーのうち、63.8%は「見られたくない情報はSNSで発信していない」と回答。15.9%は「非公開にする理由がない」、21.3%は「設定が面倒、設定の方法がわからない」と回答しています。色々と考えさせられるデータです。
このような個人情報を悪用した「Doxing(晒し)」という犯罪も登場。コンピューターウイルスで相手のPCを乗っ取り、身代金を要求する「ランサムウェア」に似た犯罪ですが、より悪質な行為です。他人に見られたくない写真やデータを公開すると脅し、子どもを危険に晒す可能性を高めて身代金を要求するのです。
不正アクセス禁止法違反の検挙件数も増加傾向にあります。自分の投稿がどのような影響を及ぼすのか、いま一度改め直さなければいけませんね。
家族の安全を守るためにも、SNS利用で意識すべきことを再確認するきっかけになりました。
関連記事:Avast Press | アバスト調査:20代女性の8割が「自分の子どもの写真をモザイク無しでSNSに投稿したことがある」と回答
パパママが知っておきたいSNSとの付き合い方
続いてITジャーナリストの高橋暁子氏が登壇。情報リテラシー教育に関する記事や、SNSに関する書籍を執筆されています。気になる子供のSNS利用の実態を紹介してくれました。
10代は複数アカウント使い分けが主流。
高校・大学生の半数はTwitterも実名で利用。
小学生のスマホ所持率は3割弱で、タブレットやゲーム機からのアクセスが多いなどなど。調べてみないとなかなか分からないデータが学べました。
中高生がよく使うアプリでは、見たこともないアイコンも登場。親の知らないところで、子供たちは独自のネットワークを築いているのです。
親側の立場に戻り、子供の写真を公開することのメリットも紹介。育児で孤独に陥らない、情報が集まる、子育てのモチベーションが高まるなど、ポジティブな面も多々あります。
その一方で、児童ポルノやデジタル誘拐、ストーカー被害にいじめなど、犯罪に繋がるデメリットも持ち合わせています。
かなり衝撃的だったのが、Instagramで公開されている子育て系のハッシュタグです。トイレトレーニングや入浴の様子など「全世界に公開して良いものなのか」素直に頷けない写真がズラリと登場。家族間で共有するのは理解できますが、思わず唸ってしまいました…
日本ではあまり聞かない話ですが、海外ではこうした投稿が原因で子供に訴えられる親があとを絶たないようです。ユーザー数が圧倒的ということもあり、Facebookでの事例が多いみたいですね。
また、入園式や入学式の写真。子を持つ親として、嬉しい気持ちは十二分に分かります。しかしながら、見る人が見れば、容易に犯罪につながるネタを提供してしまっている行為なのです。
仮に匿名での利用だとしても、SNSから得られる膨大な情報を使えば、個人の特定はとても簡単です。ID名や投稿時間、写真や他サービスとの照合、交友関係など。慣れた人なら数分で様々なデータを収集できてしまいます。
子供の写真を出さず、イラストで育児ブログを更新するブロガーさんでさえも、イラストに描かれたバスの色や行事の時期や内容から個人情報を特定されたそうです。恐ろしいですね。
本記事で紹介してきた事例も踏まえ、改めて自分のSNS投稿を振り返ってみようと思いました。
最後に、高橋さんによるまとめが核心を突いていたので、教訓として載せておきます。
- 子どもも他人。個人情報の取扱には注意と配慮が必要
- SNSは多くの人が見る公の場
- 子どもが将来不利益をこうむる情報は公開しない
横のつながりを広げられるSNSは、利用することで子供の可能性を大きく広げられるメリットもあります。今回得られた情報も参考に、危険性を理解した上で有効活用していきましょう。
現場からは以上です。
コメント