28 「魔法」に頼りすぎてはいけない(Alan Griffiths) 『プログラマが知るべき97のこと 』

プログラマが知るべき97のこと

本記事は、株式会社オライリー・ジャパンより出版された『プログラマが知るべき97のこと』の中からひとつのエッセイを取り上げ、そのエッセイをクリエイティブ・コモンズ表示3.0の条件下で転載したものです。

本書の各々のエッセイは、オープンソースモデルに従い、ほぼ無制限で利用が可能です。クリエイティブ・コモンズ表示3.0の条件下で、自由に使用することができるのです。つまり、どのエッセイも、著者の名前を明記すれば、自由に転載、改変が可能であるということです。

『プログラマが知るべき97のこと』はじめに(p.XII)

なお、原書(英文)のエッセイは、下記のWebサイトで公開されています。
Contributions Appearing in the Book - Programmer 97-things

28 「魔法」に頼りすぎてはいけない
アラン・グリフィス (Alan Griffiths)

他人のする仕事は簡単に見える

他人のする仕事というのは、どういうものであれ、遠くから見ているとどうしても実際より簡単だと思ってしまうものです。

自身が開発を経験していないマネージャは、プログラマの仕事を簡単だと思っていますし、逆にマネージメントの経験のないプログラマは、マネージャの仕事を簡単だと思い込んでしまいがちです。

「自分の頭を使って考える部分」が最も難しい

厄介なのは、今は「プログラマ」ではなくても、以前プログラミングをしたことがある人は意外にいるということです。

しかし、「ちょっとやったことがある」という程度だと、プログラミング作業の中で最も難しい部分――つまり自分の頭を使って考える部分――についてはよくわからないものです。少なくともそれをあまり重要だとは思わないでしょう。

これは、過去何十年もの間、「知識と経験を持った人でないと分からない部分」をプログラミングから排除する努力が続けられてきたおかげでもあります。

プログラマが不要になる?

最も早い時期からその努力をし、特によく知られている人物がGrace Hopperです。Hopperは、まるで暗号のようだったプログラミング言語を、よりわかりやすいものにすべく力を尽くしました。それができれば、専門のプログラマは不要になるのでは、という予測もありました。

努力の結果生まれたのがプログラミング言語、”COBOL”ですが、COBOLの誕生により、専門家は不要になるどころか、その後数十年に渡り、プログラミングによって収入を得る専門のプログラマが多数生まれることになります。

ソフトウェアの開発がこのまま簡単になっていけば、いずれはプログラミングの作業はまったく不要になる、という見方はずっと以前からあり、現在もなくなっていません。

この見方は、プログラミングを良く知っている人間から見ると、「あまりに無邪気」としか言いようがないものです。しかし、ついこういう見方をしてしまうのが人間である、ということも同時に言えます。そしてプログラマもやはり人間なので、同じようなことをする時はあるのです。

問題は「魔法が解けた」時

プロジェクトには必ず、プログラマが積極的に関わるわけではない作業も多数発生します。

たとえば、ユーザの要件を確認することや、予算の申請、ビルドサーバのセットアップ、QA環境や本番環境へのアプリケーションのデプロイなどもそうです。業務プロセスやプログラムを古いものから新しいものへ移行することなどもそうでしょう。

自分が積極的に関わらない仕事に関しては、無意識のうちに簡単だと思ってしまうし、まるで「魔法」のように自動的にできるような錯覚に陥ってしまうのが人間の常です。

すべて順調な時には、確かに魔法だと思っていてもさほど支障はありません。問題は「魔法が解けた」時です。魔法が解けてしまえば、途端にプロジェクトは頓挫し、混乱してしまいます。

物事がまるで自動的に回っているかのように…

たとえば、私の関わったプロジェクトでは、常に正しいバージョンのDLLがロードされていなければシステムがまったく動かないのに、誰もそのことを理解していなかったということがありました。

問題が頻繁に起こり始めてから見当違いの調査を繰り返し、誤ったバージョンのDLLがロードされているせいで動かないということに気づくまでに何週間もの時間が無駄になりました。

対照的に、何もかもが順調に進む部署がありました。納期には絶対に遅れず、深夜までデバックに追われるということも、顧客から緊急でバグ修正を求められるということもありませんでした。

あまりにスムーズなので、会社の上層部は、物事がまるで自動的に回っているかのように思い込んでしまいました。そして「プロジェクトマネージャなど不要なのでは?」と考えるようになったのです。

プロジェクトマネージャがいなくなった後、その部署の仕事ぶりは他と何ら変わらないものになってしまいました。納期には遅れ、バグは大量で、リリース後も絶えずパッチをあてているという有様になってしまいました。

魔法が解けてしまった時は、誰かがかけなおさなくてはならない

もちろん、プロジェクトに関わるすべての人の仕事を詳しく知る必要はありません。しかし、たとえその一部でも、知ろうとして損はないのではないかと思います。そして、自分の知らない仕事、自分の直接関わっていない仕事をしている人を尊重するということが大事です。

忘れてならないのは、「魔法が解けてしまった時は、誰かがかけなおさなくてはならない」ということです。

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