新興家電ブランドUPQは、モノづくりではなく「ブランドづくり」をしていた。説明会で感じたモヤモヤの答え

UPQの説明会で感じたモヤモヤを書き出してみる

新興家電ブランドUPQのイベントに参加してきました。

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SIMフリースマートフォンや4Kモニタ、イヤホン、ガラス製キーボードなど多岐にわたる製品がズラリとラインナップ。

blue × green(ブルー・バイ・グリーン)で統一されたカラーが目を引きます。

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製品発表後、やたらとメディアにも取り上げられていたこともあり関連記事を読まれた方も多いのではないでしょうか。「秋葉原発」だとか「若手女性起業家」だとか、まぁおっさんが飛びつきそうな要素が散りばめられています。

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UPQ 代表取締役社長の中澤優子氏

「全7カテゴリー17種24製品」という数字を掲げていましたが、カラーラインナップを製品数としてカウントするのは少し珍しい気がしました。

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どうやらこのUPQ、家電ベンチャーCerevoと深く関わりがあるようです。製品を製造する工場はCerevoからの紹介、製品サポートもCerevoの方が担当されているとのことでこの辺りの話も本記事で掘り下げていきます。

製品発表に際し、Engadget日本版でかなりの数の記事が書かれていたことに驚いたのですが、編集長とは以前から交流があった模様。

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中澤社長はカシオを退社後、秋葉原でカフェを経営。2014年にEngadget主催のハッカソンイベントに参加したことで、起業に至るまでの様々なコネクションを広げていったそうです。

殺伐とした家電業界に颯爽と登場したUPQ。たった2ヶ月でどうやってこれだけの製品を揃えたのでしょう。製品のレビューなどは他の方に任せ、本記事では説明会で感じたモヤモヤを書き出すことにします。

既存製品をガワ替えしただけ?

さて、ラインナップされた製品の写真を見て「どこかで見たことのあるような」既視感を覚えた方も居らっしゃるかもしれません。

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少し調べてみると、既存の製品をベースにデザインのガワ替えだけを行なったようなものもあるようです。

すべての製品を確認したわけではありませんが、ガラス製キーボード、スマートフォン、アクションカメラなどはすぐに類似製品を見つけることができました。

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新しいバージョンのタッチジェスチャーコントロールスマートガラス付きキーボードサポートwindowsとmacosxb6

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China 4.5″ 4G Mt6735 Android 5.1 Mobile Phone – China Mobile Phone, 4G Phone

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【小寺信良の週刊 Electric Zooma!】第723回:アキバ発ベンチャー家電、UPQのアクションカム&スタビライザーを試す – AV Watch

あれ?「モノづくり」って聞いて来たんだけど、作ってないの…?

「モノづくり」という表現に違和感

UPQ関連の記事を調べると「モノづくり」という表現を用いるメディアを散見しました。

[UPQ中澤社長の「モノづくり」への情熱] 「顔の見えるメーカーの人」になるまで – ケータイ Watch

カシオ出身の女性起業家、激安オシャレ家電を2ヵ月で17種類作る UPQモノづくり革命 – 週刊アスキー

しかしながら実際に行なっているのは型落ち製品のガワ替えです。

このやり方を「モノづくり」と表現するのは物凄い違和感があります。決してデザインやコンセプト設計がモノづくりではないと言っているわけではありません。

あくまで僕のイメージですが「モノづくり」と言われたら「ハードウェアの設計・製造・品質管理など諸々ひっくるめて全部やってます!」的な姿を連想します。既存の製品をカスタマイズするのではなく、いうなれば「一から製造を行なっている様子」が思い浮かびます。

そういった意味でUPQの製品発表時にメディアの記事で飛び交った「モノづくり」という表現にはいささか疑念を抱きました。本イベントに参加する前には「えー!これ全部2ヶ月で作ったのかよ!SUGEEEEEEE!!!!!!!」と思っていましたが、よくよく聞いてみると何やら話が違う。

注目を集めるための引きの強いストーリーがあるのは分かりますが、事前情報として肝心の部分を言及しない記事もあったのが残念でした。事実と乖離した表現を用いるのは、読む人が読めば悪手となるでしょう。

UPQの本業はブランドづくりだった

説明会での話に戻りますが、具体的な数字の話になるとまともな答えが返ってこない点に不信感を覚えました。

例えば「どれくらい売れたら成功ですか?」という質問に対して「ビジネス的観点とかそういう冷たい観点で語りたくない。目標としては売り切りたい。できれば全部」的なフワフワした答えしか返ってこない。製造台数などはどこかに出ていたりするのだろうか。

かけたコストに対していくら売れれば成功というのは計算すれば出るはずだ。なんというか採算がとれなければすぐに倒産みたいな危機感をまったく感じられなかった。とにかくお金の話を全然オモテに出さない。意図的に出していないのか、気にするほどの投資を行なっていないのか。

…と思って会社情報を見てみたが、残念ながら資本金が書かれていなかった。

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週刊アスキーの記事をよく読むと「資本金100万円」と書かれていた。たった100万円でこれだけの製品を揃えることができるだろうか?できるわけがない。どこぞから製品の製造費などをほぼ出してもらっているのだろう。その答えも書かれていた。

つまるところ、UPQの本業はブランドづくりだ。

製作・サポートなど作り手としての業務はCerevoに委託するため、UPQの従業員は中澤代表たった1人。間接費を削減しつつ、Cerevoのノウハウで製品を安く作る。具体的には中国工場との価格交渉のように、かなり泥くさいノウハウだ。

Cerevoのノウハウによって、超短期開発という強みができた。旬のトレンドを家電に取り込むこともできるようになった。

なるほど、製品のサポートだけでなく製作もCerevoに業務委託していたわけですね。中国工場に行くのは価格交渉のため。デザインやコンセプト設計、価格交渉。このあたりがメインのお仕事なのでしょう。

「ブランドづくり」非常に腑に落ちる表現です。UPQはモノづくりではなくブランドづくりをしている。ようやく納得できる表現にたどり着きました。

しかしながら既存製品に色を付けただけのもので果たしてブランドが作れるのでしょうか?単なる実績づくりで終わらぬよう、今後オリジナルの製品がUPQから出ることを期待しています。

追記:UPQ Phone含め、冷静な視点で言及されている動画を見かけたので貼っておきます

【これ良いか??】メディア絶賛スマホの良さ分からん【 UPQ Phone A01 】

2017年5月10日 追記:重大製品事故2件、非重大製品事故2件

同社で扱っていたスマホの技適未取得問題やディスプレイのスペック仕様誤記問題など、数々の問題を起こしてきたUPQですが…

2017年5月9日現在「UPQ Phone A01X」のバッテリー発火問題により「重大製品事故2件」「非重大製品事故2件」の事故が、消費者庁より発表される事態となっています。

消費者庁の規定する「重大製品事故」とは以下のようなものです。

「重大製品事故」とは

消安法第2条第6項において、重大製品事故とは、「製品事故のうち、発生し、又は発生するおそれがある危害が重大であるものとして、当該危害の内容又は事故の態様に関し政令で定める要件に該当するもの」と規定されています。

具体的には、以下の①及び②に示される危害が発生するような製品事故は、重大製品事故と判断されます。

①一般消費者の生命又は身体に対する危害が発生した事故のうち、危害が重大であるもの。

  • 死亡事故
  • 重傷病事故(治療に要する期間が30日以上の負傷・疾病)
  • 後遺障害事故
  • 一酸化炭素中毒事故

②消費生活用製品が滅失し、又はき損した事故であって、一般消費者の生命又は身体に対する重大な危害が生ずるおそれのあるもの。

  • 火災(消防が確認したもの)

「重大製品事故」の定義 : 製品安全ガイド

もはやブランドづくり云々どころの問題ではなく人命が危ぶまれる異常事態です。充電時のバッテリーを起因とした焼損であることを確認しているにも関わらず、UPQの重要なお知らせには使用停止やバッテリーを外すなどの呼びかけがありません。

もし自分の親や子どもに持たせたスマホが発火事故を起こしたらどう思いますか?ちょっとした火傷で済めば不幸中の幸いで終わる話ですが、万が一死亡事故に繋がってしまったらどうしますか?前述の「重要なお知らせ」には、そういった事態に対する想定がなされていないように見受けられました。

価格の手頃さから考えて、周囲のスマホライトユーザーへおすすめした方もいるのではないでしょうか。UPQの発表にはそういった受け手への配慮が微塵も感じられません。メディアへのインタビュー記事では散々モノづくりへの熱い思いを語っていたようですが、一連の問題への対応にはある種の憤りさえ感じます。

これまでの様子を見る限り、ユーザーへの対応は「酷い」の一言です。メーカーとしてのプライドやユーザーへの真摯な姿勢はまったく見られません。ここまで酷い事態になるまで放置していたUPQの製品を他人に薦めることは決してしないでしょう。

本当に残念です。

星影

星影

Tech Hunter代表。マルチポテンシャライト。 ガジェット、アニメ、ゲーム、インターネットが好き。

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